だって子供だもん! −おまけの章−


ジタンはエーコの手をひいて歩きながら、切なく嘆息をついた。
彼の腕にぶら下がるようにして歩く少女は満面の笑みで、嬉しそうにはしゃいでいる。
彼女の手には、彼の瞳のように蒼く澄んだ石が握られていた。
「10倍だぜ……ソレ」
軽くなりすぎて飛んでいきそうな財布の中を思い、彼は溜め息をつくしかない。
にこにこと途切れることのない笑顔を浮かべる幼い少女をちらりと見て。
ジタンは諦めたように、苦く微笑した。
「ま、いっか……たまには」
誰にも聞こえないくらいの小さな声で呟いた時、夕暮れの雑踏の中から聞きなれた声がかけられる。
「あれぇ……?ジタン、エーコ……。どうしたの?」
声の主はとんがり帽子の男の子だった。
彼と共にいるのは、片腕で様々な種類の瓶が入った大きな紙袋を抱えている少女だ。
ほっそりとした身体に小さな顔。
艶やかな長い黒髪に、愛らしい顔立ちの、少女……ダガー。
一緒に買物に来たのだろうビビの手を、空いているほうの左手で握っている。
「ダガぁ〜っ!!!」
彼女を視界に見とめた瞬間。
繋いでいた手を離し、ジタンは思い切りダガーに抱きついていた……。
エーコはむかっと顔をしかめ、ビビはダガーの手を放し、照れたようにもじもじと帽子を直す。
「やっぱ、ダガーはこうでなくちゃぁ………………」
そのセリフの後に、ジタンは何事かを呟いたようだ。
エーコ達には聞こえなかったが、ダガーにはしっかり聞こえたらしい。
みるみるうちに、ダガーの頬が朱色に染まり、瞳がキっと鋭くなった。
「………………っ!!」
…………その後、
彼がどうなったかは、ここで語るまでもないだろう…………。



−−−−そして、一日が終わって。
「……気の毒にのう……」
ベットの上に焦燥した様子で転がっているジタンを見つめながら、フライヤが呟いた。
その後、自分達の身に起きた不思議な出来事をエーコは仲間に包み隠さず話したのである。
もちろん、緊急事態にも関わらず、ジタンが町でナンパしていたことも。
ツンとそっぽを向いたダガーをなだめるのにジタンはひどく苦労したようだった。
間違いなく原因の一端であるエーコはバツが悪そうに俯いていたが、やがて開き直ったようにツンっと唇を尖らせる。
そして、意味もなく胸をそらし声も高らかに言い放った。

「だって、エーコはまだ、こどもなんだもんっ!!」


−完−

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