だって子供だもん! −第2章−


「あれぇ…?」
ふと、立ち止まってエーコは辺りを見回した。
「どうした?」
唐突に立ち止まったエーコに合わせて、ジタンがピタリと足を止める。
「なにか、おかしくない?」
それは、先ほども感じていた違和感だ。
肌をピリピリと刺激するような、そんな強い違和感。
「ん〜?そうかぁ……?」
なのに、ジタンはゆらゆらと尻尾を揺らしながら、興味なさそうに頬をかいている。
何だかその様子に、エーコはむかむかと腹がたつのを感じた。
「おかしいわよっ!」
ムキになってそう叫ぶと、ジタンは小さく首を傾げてエーコを見つめてくる。
「どこが、どう?」
「………………」
それが、わかればこんなイヤな気持ちになってないわよっ!
と、怒鳴りたいのを我慢して、エーコは言葉を飲みこんだ。
「まぁ、しかたないけどねっ!」
ジタンは「にぶちん」だからっ!!
せめてもの腹いせに、聞こえないような小声でそう呟く。
「オレはエーコが思ってるほど、ニブくないんだぜ?」
「ひゃぁっ」
絶対に聞こえない……と思っていたものがしっかり相手に聞こえていてエーコは小さく悲鳴を上げた。
しかも、ジタンは何か企んでいそうな表情をして、楽しそうに尻尾を揺らしている。
「な、なんの事っ?!」
多少裏返った声音でそうすっとぼけると、エーコはジタンを仰ぎ見た。
「さぁ?何のことだろうな」
にやりと笑うジタンがなんだか恐い。
(ど、どうしちゃったのよぉ〜。ジタンってば、変なトコに来て自分までおかしくなっちゃったのぉ……?)
なんだか無性に泣きたくなって、それを堪えるために彼女はきつく唇をかみしめた。
何故かはわからないけれど、今、ジタンの…この人の前では泣いてはいけないような気がしたのだ。
「とにかく、ここは変なのよ。ジタンが気づかなくても、絶対おかしいの!!」
小さな拳を力いっぱい握りしめ、力説しつつエーコはジタンの様子をうかがった。
「……………」
ところが、こともあろうにジタンは興味なさそうにあさっての方向をみつめている。
「ジタンのばかっ!!」
ぷっちんと彼女の中で何かがキレた。
叩き付けるようにそう叫んで、一人、走り出す。
「あ、おいっ!エーコ!」
一人じゃ危ないだろう…とか何とか叫んでいるジタンを完全に無視して、エーコは雑踏の中に紛れ込んだ。
小さな背丈のおかげで、そうしてしまうと安易には見つからないのだ。
(とにかく、モグをさがさなきゃね)
心の中でそう呟き、エーコは後ろを振り返る。
もう、ジタンの尻尾は見えなくなっていた。
それを確認してから歩調を緩め、ゆっくりと歩き出す。
(良く、わかんないけど…。ここはさっきとは違うところ…。
じゃあ、ここはいったいドコなのかしら…)
注意深く辺りを見回して、大きくひとつため息をついた。
(わっかんないわよねぇ。そんなこと)
とにかく、モグを探してモグに訊こう。
そんな決心を固め、エーコはスタスタと歩き出す。
(でも、困ったなぁ…)
さして、歩かないうちに足を止め、彼女は眉を寄せた。
いつもならば、モグの気配を感じる事が出来るのに。
呼べば出てきてくれるのに。
モグは気配すら感じさせないのだ。
(そうだ)
ふと、思い付いてエーコはにっこり微笑んだ。
(宿屋に行こう!)
場所はなんだかおかしくなって、ジタンもちょっと変になってしまったけれど。
みんなはおかしくなってないかもしれないから。
一人で悩んでるよりは、きっと解決しやすいはず。
そう、心の中で力説して、エーコは宿屋に帰るために踵を返した。


(つづく)

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